クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ

 1人暮らしの部屋は、私が帰らないと明かりが灯ることはない。
 真っ暗い箱に飛び込んで、自分が動いたぶんだけ鳴る音で地味子の仮面も脱ぐ。

 いつもなら壁のスイッチをすぐに押すけれど、今夜はそんな気分じゃない。真っ暗なまま、闇に自分を葬り去りたいような、世間と隔離して放っておいてほしいような……寂しい気分だ。




『いきなりで悪いんだけど、もう終わりにしない?俺たち』

 会社を出て、駅に向かう間に送られてきた柏原さんからのメッセージを読み返す。
 既読をつけてしまったから、何か返事をしなくちゃいけないのに言葉がない。


『どうして?他に好きな人がいるの?それとも、やっぱり社内恋愛はしないって決めたってこと?別れようって言われても整理も納得もできません』

 思うがままに文字を選んで、送信を押す前に躊躇する。


 なんて返したら、彼は思い直してくれるんだろう。
 私の気持ちを確かめただけだって、悪い冗談と流せるだろう。


 1日頑張ったあとにこんなことになるなんて、微塵も予想してなかった。

 というより、こうならないように必死だった。
 悪い方向に流れてしまうなんて、考えたくもなかったから。


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