クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ

 それだけ、と片づけられて電話すらできなくなった。


 勇気が消えて、重く鈍い音を立ててフローリングに携帯が手のひらから落ちた。



 大切にしてくれていたのは、どうして?
 辻褄が合わないじゃない。


 涙の粒が色なく足元にこぼれるなか、携帯を拾い上げて文字を選ぶ。
 途中で、やっぱり話そうと通話画面を開き、履歴から【柏原 陸】に触れた。



 3回、4回、5回。
 呼び出しても彼は応答しない。

 留守電に切り替わったからかけ直しても、彼は無反応だ。



『そうやって、勝手なタイミングで電話してくるのも、俺には合わないんだよ』

 彼のメッセージで、無視されたのだと知る。


 恋の始まりも終わりも、随分手軽になったと聞いたことがある。
 告白や別れを直接言わずとも、メッセージのやり取りで済ませる人がいるらしい。

 でも、少なくとも私の想いはそんな簡単に扱われたくなかった。


 それを言ったら、きっと彼は『重い』と言うのだろう。


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