クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
「部長命令。旅行終わったら俺の家で暮らせ」
頭に入ってきたのは、部長命令の4文字のみ。
その後に続いたいろいろは、理解も納得もできず、口の中でいつまでも咀嚼し続けているみたいに残っている。
「聞いてる?」
「はい」
「分かった?」
「部長命令、ですか」
「そう」
前髪の裏側で、まつ毛を瞬かせる。
少しずつ流れ落ちてきた命令が、ようやく意味を成して脳に辿りついた。
――部長の家で、暮らすって、どういうこと?
「瀬織さんって、反応が漫画みたいだな」
「からかうなら、もっとマシな冗談にしてください」
「冗談だなんて、いつ言った?決定事項だから。誰にも言うなよ、誤解される」
唯一、隆起している鼻の頭がスイッチのように押された。
「企画が躓いたのは、私生活が充実してないから。俺が担当に指名したんだし、責任とって“リア充”っていうやつを与えてやる」