クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
「……なに?」
ごろんと寝返った千堂部長の顔が、数センチの距離にきた。
「あの、誰かに見つかったら大変ですし、今のうちにお部屋にお戻りになられては」
「ん……」
極めて穏やかな寝息が返事の代わりに返されて、寝ぼけていただけと気づかされた。
暗闇に慣れた瞳は、これでもかと千堂部長の端麗な顔を大迫力で届けてくる。
目を閉じればいいかとまぶたを下ろせば、存在感が圧となって息をすることすら許されず、たまらなくなる。
キスをされた。
女子社員に追われて逃げ込んで、私が声を出さないようにするための手段だったのだろう。
だけど、知ってしまった。
部長の唇の温度や、やわらかさを。
寝息の音や、脱力した寝顔を。
いつもは見せない、男らしくて意地悪で、自分勝手な一面を。