クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
師走の終わりが近づいて、挨拶回りでやってくる業者や取引先のアポイントが多い。
お歳暮をいただくこともあって、部の片隅にあるおやつコーナーは充実してきた。
「瀬織さん、これも部内で適当に配ってもらえますか」
千堂部長が不動産業者と話した後、持ってきた紙袋を受け取った。
「企画、急がなくてもいいからね。年明けになったら、また打ち合わせできるように頑張って」
「はい、ありがとうございます」
私生活と会社の部長だって別人じゃない、と心で悪態を吐く。
誰にでも平等に優しくて、丁寧で物腰のやわらかな話し方をするのは会社だけ。
『企画、できるだけ早くして』
デスクに戻った部長が携帯に送ってきたメッセージは、同僚の前で言ったことと真逆だ。
文句を言いたいけれど、仮面をかぶった私は何も言い返すこともできず、視線に反抗心を詰め込む。
だけど、返されるのは千堂部長らしい表情で、悔しいけれど素敵なのは認めざるを得ない。