クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ

 グラスに水を注いで、胃薬とともにソファの傍らに座った。


「部長、お水飲めますか?」

「ん……」

「胃薬も早めに飲みましょう。吐きそうじゃなければ」

「……水」

 長細くて、少し骨ばった男の人の指。
 グラスを手渡す時に僅かに触れただけなのに、感情の欠片が取り込まれたような気がした。


 水を含み、唇の端から垂れたひと筋を手の甲で拭う仕草も。
 少し回復したのか、瞳に力が戻った表情も。
 未だ眠気から解放されていない、まどろみの雰囲気も。


 どれをとっても美しくて、見惚れてしまう。


「薬、錠剤派なんだけど」

「これしかないので」

「買ってきて」

「つべこべ言わずに飲んでください」

 細粒の飲みにくさとあっという間に広がる苦みが嫌なのは分かるけれど、ね。


 眉間にふっかーい皺を寄せ、私を恨むような目つきで薬を飲み干した彼は、ぱたりと力尽きて天井を仰いだ。


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