クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
「今日、どこに行ってた?」
上体を少しだけ起こして、皺になる前にジャケットを脱ぎ始めた彼を手伝う。吸わないはずの煙草の匂いは同席した誰かのものと分かる。
内ポケットから携帯をテーブルに出すと、外した腕時計がその隣に置かれた。
「これです」
グレージュを主にしたネイルを見せる。パールで装飾した数本が控えめながら主張があって、今回はかなり気に入っている。
「……お前ってさ、会社で地味にしてるくせに、女っぽいこと好きだな」
「部長は気付いてくれますよね。爪も携帯のカバーも」
「あぁ、そうだっけ」
そうですよ、と語尾に小さなハートをつけて返す。特に深い意味のないハートは、女子の定番。句読点より可愛いからそうするだけ。
「友達と飲みに行くので、そういう約束がある時はネイルするんです」
「楽しんでこい」
水を飲み干してからツラそうに立ち上がり、額に手を当てながら歩く部長を支えようと手を伸ばす。
「いいよ、もう平気」
さっきまでだいぶ頼られていたのに、突然拒否されたような気がして寂しくなった。