クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
「恋愛対象になりそうな相手、捕まえられそうか?」
「そうですね……どうなんでしょう」
すぐに羽野さんを思い出した。世間的に見ても羽野さんはその部類に入る。部長とはタイプが違うけれど、非の打ちどころが少なそうだ。
「お前さ、結構面食いだろ」
「なんですか、急に」
「柏原を狙うだけでも十分そう思える」
「あれは、そういうのじゃ……。私から好きになったわけじゃないっていうか」
「え、何、アイツから告ってきたってこと?」
そうですけど、と返して、想像を超えた美味しさのケーキを味わう。
部長のことを知りたいのに、彼は私の過去や今日のことばかり話してくるから、聞きたいことがなかなか聞けなくてじれったい。
「これって聞いていいのかわからないし、答えたくなかったら言わなくていいけど……なんで会社で目立たないようにしてる?正直言って、結衣を家に住まわせた初日、迎えに出た時戸惑ったっていうか」
「地味ですもんね、私。会社の瀬織と本当の私は別人だってこと、自覚してます。当然ですけど」
「……わざとそうしてるのか?」
「はい。妬みやらつまらない噂で仕事の邪魔をされるのが嫌なので」
「……なにそれ、くだらない」
入社して数年間、ずっと守ってきた砦が一撃でぶち壊され、口に運ぼうと思っていたケーキがフォークから落ちた。