クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ

 車を海沿いの路肩に停め、刺すような冷たさの風を受けながら、歩き疲れた足を休める。


「ずっと、気になってたことがあるんです」

「ん?」

 缶コーヒーで手を温める部長は何を考えているの?
 熱くて飲めないミルクココアの缶をガードレールに置いて、彼に向き直った。



「愛斗さんが先に帰った時は、どうして私を出迎えてくれないのかなぁって……。あ、別にそうしてってことじゃないんですけど、帰ってきた人を出迎えるって変わったことじゃないから」

「そうしてほしいって、素直に言えばいいのに」

「え?」

「してほしいことがあるなら、言えばいいんだよ。結衣は、相手を知りたがる割に信じなさすぎ」

 部長が、私を部下としてではない目線で見ていたことに驚きを隠せない。



「過去を蒸し返すつもりはないけどさ、柏原さんにもそんな感じだったんじゃないかって思うよ。男から見ても軽薄だとは思うけど、好きなら信じてやらないとさ。つき合ってる相手に疑われてるのはいい気分しないだろうし」

「……そうかもしれません」

 確かに、別れ話をしている時、彼もそう言っていた。


 だけどそれ以前に、大きな問題があったのも事実だ。


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