クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
帰りの道路は、予想以上に混んでいる。おかげで部長が流している音楽も2周目に入った。
「俺も、結衣に聞きたいことがあったんだけど」
「なんですか?」
ハンドルを右手で操り、左腕で頬杖を突く彼との距離はベッドにいるときと似ている。だから、目が合うだけでなんとなく気恥ずかしさに負けて、すぐに真正面を向いてしまうんだ。
「例えば、好きな男としてみたいことってなに?今まで叶わなかったことでもいいし、結構無茶なことも含めて」
「……ドライブデート」
この状況を当てはめたのに、部長は完全にスルーだ。
例えば、という枕詞が付いて回るのが憎らしい。
「あとは?」
「星空を眺めてみたいです。プラネタリウムじゃなくて、いつも見上げてる空」
「空ね……まぁ気分がいいもんなぁ、空を見るのは。他には?」
手料理をふるまいたい、休みの日にゆっくり過ごす、一緒に暮らす……。
部長が聞き出すから、本当の願いを答えたのに。
意外と普通だなって言われて、口を噤んだ。