クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
「お疲れ」
「お疲れさまです」
彼が回してくれた車に乗り込み、シートベルトを締める。
私が座りやすい位置にしたシートはずっとそのままで、仕事と恋の混ざりが気持ちを動かした。
「愛斗さん」
「ん?」
「って、仕事中でも呼んでいいんですね」
「あぁ、そっか。今、仕事中だったな」
定期駐車のチケットを挿して、地下から日の当たる地上へと車を走らせる彼の横顔を終始見つめる。
「結衣は、意識して俺を名前で呼んでくれてるけど、俺は気をつけないとマズいって今日思った」
ちらりと一瞬だけ視線を合わせた彼は、ほんの少し困ったように微笑んだ。
「瀬織さん、って呼んでたのに、結衣とかお前って言いそうになる。うっかりじゃ済まないからな」
私はバレちゃえばいいのにって思う時があっても、彼はそうじゃないんだって分かった。
絶対に越えない一線を守るために、彼は仕事と恋の境目をちゃんと持っているんだろう。