クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ

「柏原には、そうだとだけ言ったらいい。誰かにバラして騒ぎ立てるようなこと、アイツはしないよ。そういう男じゃないし、自分だって隠していることが多すぎる」

「部長はそれでいいんですか?」

 大通りを1本入ったところにある、和食ダイニングで車が停められた。
 エンジンを切ると、流れていた音楽が半端に途切れたあと、外されたシートベルトが彼のスーツと擦れる音がした。



「こんなの、困るよな。瀬織は一生懸命仕事をしてるだけなのにな」

 決して優しくない声色で問いかけに返された答えは、どことなく他人行儀だ。


「……どうして、名前で呼んでくれないんですか」

 名字で呼ばれた違和感に耐えられなくなった。
 2人きりでいるときは、絶対にそんなことはなかったのに。そういうルールを決めたのは、部長だったのに。



「企画が軌道に乗ったら、俺のワガママに振り回されることもなくなるから」

 顔を上げた彼が、やんわりと微笑む。今まで見てきた、千堂部長の顔がそこにあった。


「頼んだよ、瀬織」


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