クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
「千堂さんと瀬織さん。遅くまでお疲れさまです」
私と部長が2人でいても、動揺の片鱗すら浮かばないこの人が憎いと思った。
部長の隣に立つ自信が目に見えるようで、どんどん追い込まれていく。
「さっき営業からもらった資料を渡しておきたかったんですよ。今いいですか?」
私の横を抜けて、沙良さんの元へ向かうその背中に、涙が滲みそうになる。
「……それでは、また来週頑張ります。お先に失礼します」
フロアを出たら、涙が出ると思ってた。
それなのに、どういうわけか笑顔を貼り付けてエレベーターに乗り込んだ。誰もいないのに笑ってないといられないなんてーー
「待って!」
閉じかけたドアの隙間に指を挿し入れて、強引に柏原さんが乗り込んできた。
19:30。人影の少ないオフィス。
部長は沙良さんと過ごす予定なんだろう。