クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
小声で問いかける彼の声に反応してしまったが最後、獲物を捕らえようとしているその視線からは逃げられそうにない。
「この前、と申しますと」
「土曜日。エレベーター、壁ドン?」
キーワードを並べて、やんわりと微笑まれても困る。
会社の私と週末の私が同一人物だと気づかれては、こうして地味にやってきた今までが一気に崩されてしまう。それも、社内イチの人気を誇る男子とキスをしただなんて広まってしまったら……。
考えるだけで身震いできる。学生時代に味わった女子の醜くて黒い心に、ドボンと放り込まれるあの恐怖は2度と味わいたくないのだ。
何も悪いことをした覚えはない。ただ人より容姿がいいと言われることがあって、でもそれを鼻にかけた覚えもないし、誰かと比較して優劣をつけた記憶もなかった。私にしてみれば、完全に妬み以外の何物でもないと思っている。