クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
「……お疲れさま」
通路を歩いていると、向こうから千堂部長がやってきた。
他に誰もいない状況で話すのは玉砕したバレンタイン以来で、挨拶すら儘ならない心の中はザワザワとうるさくなる。
「お疲れさまです」
地味子の私らしい、テンションの低い声と一瞬だけ合わせた視線。
これが精いっぱいなの。
期待するのが怖い。
彼を名前で呼ぶことも許されないし、甘く輝いている思い出の時間は、もう戻らないから。
遠く遠く、手の届かない人でいてくれたら、こんなに切なくなることもなかったはずなのにな……。
「企画、いいスタートが切れそうですね」
「ありがとうございます」
社内用の彼に合わせた対応で、私の緊張する心模様も社内用にチューニングを始めた。