クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
「いま少しだけでも話せますか?」
目の前に立ち塞がる彼の低い声に、思わず肩が竦む。
「今はちょっと……これを届けたいので」
「いいから、来い」
強引に手を引かれるなか、彼の片手に沙良さん宛の書類を見つけた。
私に会いに来たわけじゃないことは100%わかってるけど、こんなにわかりやすくされると自分を哀れに感じる。
3畳ほどの広さしかない給湯室に入れられるなり、背中を壁に押し付けられた。
部長にしては、珍しく苛立っていて……それがどうしてなのかわからなくなる。
チョコレート、受け取ってくれましたか?
名前もメッセージもない、小さな袋に入ったリボンで飾った小さな缶には、甘い粒とビターな粒が並んでいたはずで。
そこには、私のありったけの想いを、迷惑なほどに詰め込んであって。
何度も何度も、飽きるほど心で問いかけてばかりだ。
でも、きっとこれでいいんだと思う。
沙良さんがいるから。
彼の未来の恋の相手は、私の出る幕もなく決まっていたんだ。