クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
「仕事、途中なので失礼します」
そそくさとフロアを出て、2階上までは非常階段で急ぐ。悠長にエレベーターを待っている余裕はない。
なんで気づかれたの?!
別人になりきれているはずなのに。入社して今日まで、誰にも気づかれたことはなかった。週末、街で誰とすれ違っても。
それなのに、どうして……。
「待って」
非常階段を小走りで駆け上がる私の手を引いて、柏原さんが引き止めた。
その反動でバランスを崩した私の身体は、彼の腕の中へと落ちていく。
「……ごめん、怪我してない?」
私をしっかりと受け止めた彼の声色が耳元を掠めた。
「大丈夫ですから」
体勢を整えてからもがいて、彼から離れようとした。こんなところ、誰かに見られたら一巻の終わりだ。
「なんで逃げんの?」
抱きすくめられて身動きを封じれらた私を、彼は完全に追い詰めた。