クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ





 翌日、まだ何も決まっていない段階の打ち合わせ「通称・0打ち」が始まった。

 フロアを出るときに背中に感じた佳乃さんの視線は、ミーティングルームに着いても刺さって抜けない。あんな顔をするくらいなら、仕事で張り合ってくれた方が清々しい。それに、私は千堂部長を狙っているわけではない。



「何か考えてることとかある?」

「……すみません、正直ちゃんと浮かんでないんです」

「そりゃそうだよね、昨日今日の話なんだから。でも、商品企画部にいるんだから、アンテナは常に高くしていてほしいのが、上司としての意見かな」

「はい」

「俺は今まで色々な企画に携わってきたし、それに追随して他部署と連携する経験もある。だけど、瀬織さんは未経験と言っていいと思う。どうして今回、瀬織さんに企画を任せようと思ったか、そこから話してみようと思うんだけど」


 ホワイトボードを使ったり、資料を見て話しあうだけが打ち合わせじゃない。
 こうして部下の意識や、得手不得手を再認識した上で事を進めるのが、千堂部長のやり方だっていうのも分かっていた。


 でも、いざ自分がその立場になったら……緊張とプレッシャーと、無力さに思い切りぶち当てられるような痛さを感じた。


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