クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
企画だけが私の仕事ではない。元から預かっていた会議資料だって締め切りは迫っているし、他部署とすり合わせる内容だってある。柏原さんがいる店舗統括部に依頼していたデータが届いていて、内容に目を走らせた。
「それじゃ、お先です」
隣の席に座っている男性社員は、淡々としている。感情をあまり表に出さず、周りがいくら賑やかになっても1歩引いて見ているタイプだ。何を考えているのか分からない人ではあるけれど、私に必ず挨拶をしてくれる数名のうちの1人だ。
「お疲れさまでした」
ついでに財布を持って、自販機に向かう。まだ帰れそうにないからフルーツジュースでも飲んで、気分転換を……。
お手洗いから漏れ聞こえる声に、つま先の方向が変わった。
「恋が満ちるときってコンセプトなのに、ご本人に女子力足りてないんじゃ、お先真っ暗じゃない?」
あはは、と高笑いして揶揄するのは、間違いなく佳乃さんだ。15分ほど前に帰っていったはずなのに、まだいたのかと驚きつつ、自分が話題にされていて悔しくなった。