クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
控えめに撫でられる髪が、くすぐったい。
痛いほど見つめられる瞳は、秒を重ねるごとにそらせなくなる。
傾く顔に、キスの予感。
甘くなっていくこの距離に促されてそっとまぶたを下ろそうとしたら、人感センサーの灯りまで消えてしまった。
「俺の前では、素直になれよ」
ほどなくして重ねられた唇は、私の味方でいてくれる温度がした。
何度か弾けるキスの音と、わずかに離れた唇。
呼吸の合間で視線に大きく胸の奥が動こうとしている。
「……返事は?」
頷いた私の頬を、彼の手のひらがやわらかく包む。
そんなに優しくされたら、涙が出る。理由はどうあれ、癒されたかったんだって気づかされた。
先入観は、私が嫌うものの1つだ。
だけど、それに囚われて柏原さんを見ていたのだとしたら……。
これが、社内恋愛の始まりなのかもしれない。
なんて絵に描いたようなスタートなんだろう。
柏原さんのキスは、私に想いを届けようとしているのが伝わってきて、満ち足りた気分になった。