【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
そんなことがあって、
結局私は、隼大を宮坂先生にお願いして東京に戻り、
元の通り、看護学校の実習の毎日に没頭していった。

連日の実習に、母のことを
ゆっくり思い出す暇さえないような
慌ただしい生活が続いていた。

そんな毎日の中で、
電話で話す隼大は思ったより元気で、

宮坂先生は、その荒っぽいしゃべり方とは違って、
隼大の毎日の生活をきちんと見てくれているらしく、
気になっていることや、隼大の気になる行動なども、
その都度報告してくれるので、
私は弟と離れて暮らしていても、
安心して勉強に集中できた。

何より、隼大にとっては、
小さいころから仲良くしていた友達と、
小さいころから過ごしてきた土地で、
彼を小さな頃から知っている人たちに
見守られて過ごせることが、
とっても気持ちの助けになっているようだった。

本当に、隼大をあずかってくれると、
言ってくれた宮坂先生には感謝してもしきれない。

それに、宮坂先生が体育館で教えている
柔道教室にも参加しはじめて、
始めたばかりの柔道が面白い、と
隼大はその日あったことを楽しそうに伝えてくれることも多い。

私は実習で疲れた夜の電話で、
元気な隼大の声を聴くと、本当にホッとすることができた。
電話を代わって、隼大の日常生活について、
話をしてくれる宮坂先生に、
心からお礼を言いかけると、
毎回、彼はくだらないちょっかいというか、
からかいのような言葉を口にするから、

毎回、毎回、
丁寧にお礼を言うことができなくて。

照れなのか、なんなのか、
毎回それを誤魔化すように全然別の話をする。

いつもそれで調子を崩されてしまう。
こうやって子供たちも、彼のペースに巻き込まれているんだろうか?
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