【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫

気づけば学校では、
彼は「やくざ先生」なんて呼ばれるようになっていて、

そんな噂を聞いてきた、隼大が、
私に報告してきた直後、
『穂のか』で彼に偶然会ったので、
私はついつい、その話題を聞いてしまう。

「なんか、最近、変な人が、
拓海のことを聞いて回っているって聞いたんだけど」
そう私が、普段通り、飄々としたままの彼に尋ねる。
「なんで、そんなことになっているの？」

そう尋ねると、肩をすくめて、
唇を緩くゆがめて、
苦笑を浮かべるような表情をする。

「…………」
そのまま何も答えないから、
私は、少しだけ苛々としながら、
「一応、心配してるんですけどね？」
そう言うと、

「理由なんて、知るか」
そう少しだけ投げやりな答え方をする。
「聞きたい奴は、聞けばいいだろう？」
そう、少しだけ機嫌悪そうに煙草を取り出す。

慣れた仕草で、カチリとライターの音を立てて、
少しだけ眉を寄せて、紫煙をゆっくりと燻らせる。
煙草を吸う姿を見たのが初めてだったので、
私は思わず、眉をしかめてしまう。

「ああ……苦手だったか？　悪いな……」
そう言って、慌てて煙草を灰皿に押し付けようとするから、
「いえ、別に苦手じゃないですけど、
看護師は吸う人多いし」
私がそう言うと、彼はそのままその煙草をもう一度咥えて、
深く吸い込んで、長く緩やかに吐き出す。

「ただ、今まで吸っているのをみたことなかったので、
ちょっとびっくりしましたけど」
そう言うと、彼は少しだけ目元を緩めた。