【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
結局、彼の身辺を探るような動きをしている、
その男のことはわからなくて、
私はどこか不安な気持ちのまま、
時計を見て、
そろそろ日付が変わると思って席を立ちあがると、

「帰るんなら送るぞ……」
そう言って、彼が一緒に席を立つ。
本当は遠慮するべきなんだろうけど、
やっぱり彼が送ってくれるのは、
嬉しくて、それにやっぱり深夜一人で歩くのは不安だから、
そのまま彼の言うままに送ってもらうことになる。

夏の湿った熱い空気が、
徐々に少しだけ乾いた、涼やかな風に変わってきている。

いつも通り、少しだけ前を歩く彼の背中を見つめながら、
親切なのに、いつも、どこか
私を完全には受け入れてくれない雰囲気に、
彼はいったい何を背負っているのか、と思う。

嫌われてはいないと思うのに、
すうっと線のようなものが引かれていて、
それ以上近づこうとすると、
そっと距離を置かれるような感覚がある。


その距離感が切なくて、
手を伸ばしたらすぐ届くところに彼はいるのに、
その距離が手を伸ばせないと思うほど、
その引かれた線は強烈で、
切なさで苦しくなって、心臓が止まりそうなほど、
その距離感が悲しくて、

私は、小さく、気づかれないようにため息をつく。
手に入れられないような気がするほど、
たまらなく、手に入れたくなるというか、
こちらを見てほしい、
何も気にすることなく、
私だけを見てほしい、そんな風に思ってしまう。

そんな瞬間は、
心臓を締め付けられるように苦しいのに、
それでも目の前を歩く背中から目をそらすことができない。

苦しくて切ないのに、
彼だけを、ずっと見つめ続けてしまう……。
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