【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
そのまま、彼と道を歩いていると、

「……宮坂さん、ですね?」
そう言って彼を呼び止める人がいる。
その声に思わず振り向いてしまうと、
そこにいたのは、ラフなジャケットを羽織って、
カメラを肩から下げた、目つきの悪い男で、

「……?」
言葉を出さずに、不機嫌さを隠すこともなく、
その男に負けないくらい、
キツイ目つきでその男を見つめる拓海に、
私は言葉も出ない。

多分、この人が、街で噂になっていた男だ。
拓海のことをあれこれ聞いて回っていると言う、
その男なんじゃないかと、直感的に理解した。

「ようやく本人に逢えましたよ」
そう言って、ニヤリと唇をゆがめて笑う。
「私、こういうものでして」
そう言って、拓海に名刺を一枚渡す。
彼は、チラリとその名刺を一瞥して、ああ、と一声答える。

「……俺に話を聞かない限り、
あちこちにそうやって聞いて回るつもりだよな?」
そう言って深く、ため息をつく。

「……夜も遅いからな、
こいつを送ってやってからでいいか?」
そう言って、ちらりと私に視線を投げる。
私は彼と、この男の関係が気になって、
彼が、嫌そうに指先で摘まむように持っている
名刺をこっそりと覗き込む。

そこには、
『フリーライター』と書かれていて、
……フリーライターって雑誌の記事とかを
書く人だろうかと、見当をつける。
だからといって、なんで拓海のところに、
そんな人が来るのかもわからないし、
しかもこんなにしつこく聞いて回るのかもわからない。
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