【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
そうして、彼の話を聞けたからなのか、
その男は島から去って、

私は、拓海に何の話か聞きたくて、
それなのに、なかなか彼と逢うことができなくて、
気づけばそれから数週間が経って、
そして、季節はすっかり秋になっていた。


そんなある日、職場での休憩時間に、
同僚の看護師が私の顔を見て、
手招きをする。

「……隼人君がお世話になってた先生、
なんか、大変な経験をされてたのね……」
既婚者で、既に子供もいる、
私よりだいぶ年上の看護師さんが、
そう言って私に一つの雑誌を指し示す。

「……？」
私は一瞬何のことかわからなくて、
彼女の指し示した雑誌を見て、
忘れかけていた、あの不安感がジワリと、
胸の中に上がってくる。

「……これ、なんですか？」
そう尋ねると、彼女はパラパラと雑誌をめくって、
とあるページを指し示す。

「……読んでみる？」
そう尋ねてくるから、
私はその雑誌を奪い取るように手に取って、

声を掛けてくれた看護師さんの言葉に
返事もする余裕もないくらい、
必死に雑誌の記事を読んでしまう。
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