【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
私は無意識でそれをぬぐって、
ああ、私は泣いているんだ、とそう思った。

慌ててナプキンで涙を拭う。
冷静にどこかで恥ずかしいと思う自分もいたりして、
もう、何が何だかわからない。

苦しいよ。
拓海……。

そう心で叫んでも、
言葉にはならない。

私の苦しいのを何とかできるのは、
拓海だけなのに、なんでここにいないの?

と一瞬叫びそうになる唇に、
ワイングラスを当てて、それをもう一度煽って、

「あの、おかわり……」
そう言いかけると、ウェイターさんが一瞬困った顔をする。

「すみません、オーダーストップです」
そう彼が言うのを聞いて、
何かを言いかけようとして、

「……何やってんだよ……」
ウェイターの人の肩を叩いて、顔を覗き込む人が居る。

「……貴志……」
そう私が幼馴染の名前を呼ぶと、
彼が眉をしかめて不機嫌そうな顔をする。

「みっともないぞ、佳代らしくもない……」
そう言って、私の机に乗ったチェックを持って、
そのまま支払いを済ませて戻ってくる。

「私らしいって何よ……」
酔ったまま、私が反論しかけるのを彼は無視して、

「歩けるか?」
そう言って彼が私の肩を抱えるようにして、
私を席から立たせる。

「……何やってんだよ、本当にお前は……」
そう言って、お酒を飲み過ぎて、
足腰が立たないような状態の私を、
無理やり引っ張って、玄関ロビーまで連れて行く。

「……歩けねえだろ?」
そう言って、彼はロビーでタクシーを拾って、
私を押し込む。 
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