【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
パチンと、貴志が慣れた手つきで電気をつけて、
私を部屋に招き入れる。

少しだけ乱雑な部屋で、
貴志は慌てて、ソファーに乗った服をベッドに投げ出す。

「座れよ……」
そう言われて、私はその場に座り込んでしまう。
車で酔ったのか、急に気持ち悪くなって、

「……トイレ……」
そう言うと、彼が指示した方向に走り込んで、
そのまま吐き出してしまう。

「……まったく何やってんだよ……」
呆れたような声が聞こえて、
トイレまで彼がやってきて、私の背中をさすってくれる。

「……う、ごめ……」
一通り吐いたら楽になって、
私は彼が渡してくれたミネラルウォーターを飲む。

そのまま部屋に戻り、またソファーに座ると、
彼はベッドに胡坐をかいて座り込んで、

「いったい何があったんだよ?」
そう眉をしかめて聞いてくる。
「いつも優等生のお前らしくないじゃん……」
優等生なんかじゃない、そう言おうと思いながら、
私は大きくため息をつく。

もう一杯水を飲んで、はぁっともう一度息を継ぐ。
じっとこちらを見つめている貴志の視線に負けて、
私はポツリポツリと今までの話をする。

貴志は私の話を、
不機嫌そうに時々眉をしかめながら聞いている。

拓海の遭遇した事件の話。
そして、彼女の話。
結局気づけば、秘めていたはずの、
拓海への気持ちも口にしてしまっていた。

「……んとに、馬鹿だよな……」
そう言って、貴志はため息をつく。
「どうせ馬鹿ですよっ」
そう言うと何だか一気に感情が爆発してしまって、
ふぇっというような変な声が漏れる。
声を上げたら止まらなくなってしまって、
そのまま声を上げて泣いてしまっていた。

しばらく顔を覆って泣いていると、
貴志が私の隣にどさりと座りこむ。
そのまま、私の頭を抱え込むようにして、
自分の胸に抱き寄せる。

「……だから、お前は馬鹿だ……」
もう一度そう言いながら、
ゆっくりと貴志の指先が私の髪を梳く。
言葉はキツいのに、その緩やかな指先が心地よくて、
苦しくて仕方ない気持ちが少しだけ癒されるような気がして、
私は抗うことなく、彼の腕の中で泣き続ける。

頭のどこかで、
私は逃げているだけなんじゃないか、って
そんな事実にも気づいてないわけじゃない。
だけど、今は現実をすべて受け入れることが
苦しくて、辛くて……。

苦しくて辛くて泣いているのに、
ずっと泣いているうちに、徐々に涙が枯れてくる。
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