【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
「……え?」
私が一瞬彼の顔を見上げると、
もう一度すたすたと私の方に歩いて戻ってきて、
至近距離で私の顔を覗き込んで、
ペシっと私のおでこを指先で叩く。
「何すんのよっ」
さほど痛くなかったけど、とっさにそう言いかえす。
「これだから鈍感な女は嫌なんだよ……」
じっと私を見つめる彼の瞳に、
思わず私は圧倒されて言葉を失う。
「……あんなオトコ、やめとけよ……」
そう言ってゆっくりと私から視線を逸らす。
「待ってたってどうにかなるもんじゃないんだろ、きっと」
その言葉に私は思わず言葉を失う。
そんなこと、言ってほしくない。
どこかで彼を待っていたいっていう気持ちがあるから、
ぽろり、とまた涙が零れ堕ちる。
「……ああもう、ややこしいな!」
そう言って彼はガシガシと私の頭をかきまわす。
「やめろ、やめちまえ、そんな面倒なオトコ」
「……俺がお前のことだけ見ててやるから」
言葉遣いは悪いのに、
そっと私の髪に優しいキスを落とす。
私は貴志の気持ちも、自分自身の気持ちもわからなくなって、
そっと、彼を押しやって、じっと彼の顔を見る。
「…………」
思わず言葉が出なくて黙ってしまうと、
貴志が、大きなため息をつく。
「別に今じゃなくていい。
……ただ、俺もいるってこと、忘れんなよ?」
そう言って、私から距離を置いて、
そのままフラっと台所に消える。
そのまましばらく帰ってこないから、
私は黙って彼の言葉を反芻する。
拓海を好きでいることを、やめた方がいいんだろうか?
……でも、そんなことできるんだろうか?
今はこんなに苦しくても、
時間が経てば楽になるのかな?
……他の人を好きになったりすることもできるんだろうか?
部屋の向こうから、馥郁としたコーヒーの香りが漂ってきて、
どうやら貴志がコーヒーを入れてくれていることに気づく。
貴志は優しい。
そして、多分私のことを好きって言ってくれている。
でも、貴志に抱きしめられても、
胸が苦しくて、壊れそうになることはない。
──少なくとも、今は。
これが拓海だったら、
きっと私は壊れてしまいそうなほど、ドキドキして、
苦しくて、涙が出そうなほど切なくて。
……たまらなく幸せな気持ちになるのに。
貴志の優しさが嬉しくて、ちょっとだけ、重たい。
結局、私は拓海のことしか今は見えてなくて……。
拓海の笑顔が一瞬脳裏に浮かんだら、
涙を浮いてきそうになって、
私は持っていたハンカチで目元をそっと抑えた。
私が一瞬彼の顔を見上げると、
もう一度すたすたと私の方に歩いて戻ってきて、
至近距離で私の顔を覗き込んで、
ペシっと私のおでこを指先で叩く。
「何すんのよっ」
さほど痛くなかったけど、とっさにそう言いかえす。
「これだから鈍感な女は嫌なんだよ……」
じっと私を見つめる彼の瞳に、
思わず私は圧倒されて言葉を失う。
「……あんなオトコ、やめとけよ……」
そう言ってゆっくりと私から視線を逸らす。
「待ってたってどうにかなるもんじゃないんだろ、きっと」
その言葉に私は思わず言葉を失う。
そんなこと、言ってほしくない。
どこかで彼を待っていたいっていう気持ちがあるから、
ぽろり、とまた涙が零れ堕ちる。
「……ああもう、ややこしいな!」
そう言って彼はガシガシと私の頭をかきまわす。
「やめろ、やめちまえ、そんな面倒なオトコ」
「……俺がお前のことだけ見ててやるから」
言葉遣いは悪いのに、
そっと私の髪に優しいキスを落とす。
私は貴志の気持ちも、自分自身の気持ちもわからなくなって、
そっと、彼を押しやって、じっと彼の顔を見る。
「…………」
思わず言葉が出なくて黙ってしまうと、
貴志が、大きなため息をつく。
「別に今じゃなくていい。
……ただ、俺もいるってこと、忘れんなよ?」
そう言って、私から距離を置いて、
そのままフラっと台所に消える。
そのまましばらく帰ってこないから、
私は黙って彼の言葉を反芻する。
拓海を好きでいることを、やめた方がいいんだろうか?
……でも、そんなことできるんだろうか?
今はこんなに苦しくても、
時間が経てば楽になるのかな?
……他の人を好きになったりすることもできるんだろうか?
部屋の向こうから、馥郁としたコーヒーの香りが漂ってきて、
どうやら貴志がコーヒーを入れてくれていることに気づく。
貴志は優しい。
そして、多分私のことを好きって言ってくれている。
でも、貴志に抱きしめられても、
胸が苦しくて、壊れそうになることはない。
──少なくとも、今は。
これが拓海だったら、
きっと私は壊れてしまいそうなほど、ドキドキして、
苦しくて、涙が出そうなほど切なくて。
……たまらなく幸せな気持ちになるのに。
貴志の優しさが嬉しくて、ちょっとだけ、重たい。
結局、私は拓海のことしか今は見えてなくて……。
拓海の笑顔が一瞬脳裏に浮かんだら、
涙を浮いてきそうになって、
私は持っていたハンカチで目元をそっと抑えた。