【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫

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目覚ましのアラーム音がなった途端、
俺は、目覚ましを止めた。

起き上がると、ぼーっとしたまま、
枕元にあった煙草に火をつける。


昨日はほとんど眠れなかった。
最後に店に残した、佳代のことが気になっていた。
俺の話を聞いて、
苦しそうな、悲しそうな表情をしていたことが、
胸に居心地の悪い傷を残しているような気がした。

彼女の表情を見ていれば、
その感情がどこにあるのか、
何とはなくわかるような気がして、
でも、結局はそれを受け入れることが自分にはふさわしくない。
そう思いながら、結衣の話を彼女にしていた。

残酷なように思えるだろうが、
真実は真実だ。
誤魔化すより、きちんと伝えるべきだと、その時はそう思っていた。
何より自分が優先しなければいけないのは、
結衣だから、と、そう思っていた。

明け方に少しだけうとうとして、
夢の中で、涙を流す結衣を慰めようとして、
抱きしめると、その姿は途中で、佳代になっていて、
俺は夢の中で佳代を抱きしめて、
結衣にそうしてやったように、
髪を梳き、額にキスを落し、耳元に優しい言葉を囁く。

目覚めるまでそうしてずっと彼女を慰めていた。
目が覚めると、途中で結衣が佳代になっていたことに、
夢の残滓を追いながらようやく気づく。

どうしてそんな夢を見るのかわからないまま、
重たい荷物を胸の中に抱えたような気持ちになって、
普段より少しだけ早く、小学校に向かった。

普段通りの道で、通りかかる住宅街に、
見慣れた影があるような気がして、
一瞬意識をそちらに奪われる。


小さなアパートの玄関先に立っていたのは、
昨日別れた姿のままの、佳代で、
その傍らにいるのは、彼女の幼馴染の貴志、という男性で。

何か佳代が彼に話しかけて、
頭を下げた瞬間、
彼が彼女の華奢な体を捕える。

そのまま、吸い寄せられるように、
彼は彼女の唇を捕える。

瞬間、ゾクリとするような、
冷たいものが身の内を走るような気がした。