【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
「佳代おせぇよ……」
待ち合わせの場所に行くと、
貴志が不機嫌そうに言うくせに、顔はにこにこ笑っていて、
なんだか、コイツってこんな奴だったかなって、そんな風に思う。
デートと言ったって、映画を見に行ったり、
ショッピングに行ったり、食事をするくらいで、
そんな変わったことをするわけでもない。
あんまりデートと言うほど甘やかな感じがあるわけでもない。
それは多分、私がそう言う雰囲気を避けているからだと思う。

たまに、そっと、貴志が私の手を握って、
手を繋いで歩いたりはするけれど、
なんだかそう言うのは幼馴染だから、照れくさくて、

「あ、あれ、ちょっと気になってたんだ!」
そんなことを言って、一軒先のお店に、
品物を見に行くふりをして、彼の手から逃げ出す。

嫌いじゃない、けど、大好きな訳でもない。
多分、彼に恋はしていない。
こんなことをしてて、私はいいんだろうか。
貴志の気持ちを弄んでいるだけなんじゃないか、
そう思って、誘いの言葉を断ろうと思うのに、
毎回、断り切れなくて、ずるずると彼とデートを繰り返す。

そんな自分が本気で嫌になってしまう。
いい加減な自分が嫌でたまらなくなる……。
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