【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
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あの朝以来、
佳代はたまに貴志とデートをするようになったらしい。
二人は付き合っているんだろうか?
……まあ、彼女をどうすることもできない自分は、
彼女にはふさわしくないのだから、
他に好きな男ができて、
ソイツと幸せになるのなら、本当はそれが一番いいのだろう。
なのに、どこかで、自分自身その状態を快く思ってはいないらしい。


「最近、佳代さん、彼氏ができたみたいですね」
そう昼ご飯を食べに出た定食屋で、
笑顔で話しかけてきた、麻生先生に、
思わず不機嫌な表情をしてしまいそうになって、
慌てて、表情を殺す。

「……そうみたいだな」
とっさにそう答えるのが精いっぱいだ。
そんな俺の顔を見て、
麻生先生は少しだけ色っぽい笑みを浮かべる。

「……なんだか、機嫌悪そうな顔してますよ?」
そう唇の端でくすりと笑って、
小さな声で、まったく素直じゃないんだから。と呟く。

「麻生先生は元気そうだな」
そう思わず言い返すと、
「うん、彼氏ができたので」
嫣然と笑みを深めた。

「そりゃよかった」
思わずそう素直に言うと、
「……全く私の時は、そんな風に素直に良かったねって言えるのにね」
そう言って、じっと一瞬俺の顔を見て、

「……何か理由があるか知らないですけど、
大事なものは、無くしてからきづくんじゃ、
遅いかもしれないですよ?」
その声がどこか真面目な色合いを帯びるから、
「…………」
思わず俺は声を失う。

「良い事一つ教えてあげましょうか?」
なんだか彼氏ができたせいで余裕があるのか、
麻生先生のしゃべり方は
以前と少し違って俺への媚は一切なくなってきているような気がする。

「多分だけど、佳代さんは、
今付き合っている彼のことを、本気では好きじゃないと思いますよ?」
そう言って、ちらりと見上げた瞳で、俺の視線を捕える。
それは、そうかもしれないと、
そう思ってしまうのは俺の自惚れだろうか。
ただ、佳代の性格からいって、
そんなにすぐ他の男に行けるほど、
器用ではないような気がしている。
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