【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
「そっかあ……」

彼も自分に正直になる方が、
きっと幸せになるんだろうけどな……。
今のままでは、誰も幸せになってないんだけど……。

……まあ、私には関係ないけどね。

困ったように笑う彼女の言葉を、
半分酔いに紛れて朦朧とした頭で聞いている。

カクテルって、甘いのに、結構酔っぱらうんだ……。
そんなことと、彼の事と、
それから、目の前の麻生先生の色っぽい笑みが
頭の中でクルクル回る。

「もお、私どうしたらいいのかな」
思わずそう叫ぶと、

「ちょっと、しばらく、私と遊んでおかない?」
くすりと彼女が笑う。

「……まあ、悪いようにはしないから……」
なんか、ほっとけないのよね、貴女……。
そう言って彼女が目を細めた。

「この私を袖にしたんだから、
その分きっちり落とし前つけてもらわないとね」
そんな物騒なことを言って、くすくす笑う。

「あの、拓海に何かひどい事する……」
私が言いかけると、彼女が大きな瞳を見開いて、
ぱちぱちと首をかしげて瞬きをした。

「……わけないじゃない。まあ、ちょっとぐらい、
嫉妬でのたうちまわってもらって、
自分の頭の中を整理してもらおうって
思っているだけなんだけどね?」

そう言って、にっこり笑って
残りのカクテルを飲み干す。

「まあ今だって、
連絡が取れないくらいで、あれだけの壊れっぷりだからな……」

……やっぱり『天然』に翻弄されているよねえ
『天然』最強だよね。

くすくすと楽しそうに彼女が笑うのを見て、
天然が誰で、壊れているのが誰かも、
良く意味が分からない私は、
目を丸くして、
彼女の笑みを見つめているだけだった。
< 160 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop