【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
「佳代って意外とどんくさいよな」
そんな偉そうなことを隼大が言うから、

「何言っているの」
そう私が怒ると、隼大は私の方を向いて、
いきなり、衝撃的な事を言う。

「どんくさいからさ。
佳代、先生に嫁にもらってもらえよ」

私はそのセリフに、
思わず箸をとり落としてしまった。

「あ……」
私が思わず頬に熱を感じて、
隼大にあわてて言い返そうとすると、
いつもなら面白がって
一緒になってからかいそうな先生が、
ぼそり、と呟く。

「俺はやめておけ。ろくなもんじゃねえ……」

そう一言答えた声は、どこか傷ついたようで、
切なくて、悲しみを秘めているような気がして、
思わず私は先生の顔を見つめてしまう。

「佳代みたいな美人は、
いくらでも相手がいるだろ?」

私の視線に気づくと、
打って変わって明るい声を上げる。

「さっきの幼馴染とかな……」

そう言って、普段通りに笑うから、
私は、先ほどもまでとは違う、

苦しい、切ないような
締め付けられるような胸の痛みを覚えて、
そんな自分に戸惑っていた。

私には興味がない、
そんな風に彼に言われたような気がして、
私は一瞬小さなため息をついて、
慌ててお茶を手に取って誤魔化す。

その時の私は、先生との関係をからかわれて、
それを彼に否定されたことが、
どうしてそんなに切なく感じるのか、
まったくわかってなかった。

そして、これからどれだけ
その胸の痛みを感じることになるのか。

そんなことだって、このころの私は
まだ、何もわかっていなかったのだった……。
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