【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
番外編 episode:hayata + α
【この話は佳代の弟:隼大視点の
エピローグ直後のお話です】


ふと、目が覚めると、
カーテン越しの外はすっかり明るくなっている。

「……やべ、寝過ごした?」
慌てて携帯を取ると、既に昼を回っている。

「佳代?」
寝ぼけた頭のまま、部屋を出て、台所に顔を出す。


「……昨日佳代は帰ってこなかったんかな……」
まあ、夜勤に准夜勤のある仕事だから、
朝いないのは別にびっくりしないけれど、

「……昨日は確か日勤だったよな?」
台所にかかっているカレンダーに書き込まれた
勤務予定を確認する。
日勤の朝家にいないのは珍しい。
今日は休みのはずで、
佳代が朝から居るなら、
多分この時間まで俺が寝ていられることはありえない。

「朝早くからたたき起こされるからな……」
冷蔵庫を開けて、牛乳を取り出す。
グラスに入れてそれを飲んで。

「……ん?」
一通、携帯にメールが届いているのに気づく。
それは昨日の深夜に拓海からのメールで。

『佳代はうちに泊まっているから心配すんな(笑)
明日、そっちに俺が顔を出すから、よろしく(^0^)/ 』

「………………はあああ?」
思わず声が漏れる。

佳代が、拓海のところに泊まってる?
そんでもって、心配するな?
まあ、佳代なんて大人だから心配なんてしねぇけど。

……で。なんで拓海が俺のところに顔を出すんだ?

「……意味わかんね」
と呟きつつも、一つの予感が頭に浮かんでいる。


最初拓海にあったのは、もう、4年は前のことになる。
あのころ俺はまだ小学生で、
その年の夏、母ちゃんが死んで、
東京の学校に行ってた佳代が、
学校をやめてこっちに戻ってくるとか来ないとか言ってて。

そんなゴタゴタの時に、何かで拓海と二人っきりになって、

「お前、半年一人でも頑張れるか?」
そう、拓海が俺に聞いてきたんだ。
母ちゃんが居なくなって不安だった俺に、
拓海が続けて言ったのは、
「お前の母ちゃんだったら、
姉ちゃんが、途中で学校をやめるって言ったら、
がっかりしたんじゃねぇか?」
そんな言葉で。
確かに母ちゃんなら、
死んでも学校をやめんな、気合で最後までやれって言うよなって思って、
その言葉にうなづいた。

「だったら、お前が一人で、半年頑張ってやれば、
姉ちゃんはちゃんと学校を卒業できる」
夢もかなえることができるんだ。

と、そう言った。
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