【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
欲しい。
望んではいけない。
……ほかの男には絶対にやりたくない。
だからと言って、将来を約束してやれるわけでもない。
単に俺の我儘なだけだ。

帰り際の、佳代の切なげな表情が胸にささる。
……自惚れでなければ、多分惚れられているとは思う。
俺が自分の情欲のまま、
アイツを望めば、腕の中に落ちてきそうな、
そんな危うさもある。

きっと、あの艶やかな髪を撫ぜた瞬間、
多分、あのなめらかな頬に指先を滑らせた瞬間、

……一瞬で俺の理性が崩壊するだろうと思う。


「あ゛~~~~~!!!!」
十代のガキじゃあるまいし、
と、自らにため息を着く。

ただ、無自覚に誘惑し続ける佳代の記憶に、
今夜も懊悩して、
のた打ち回りながら眠りに着くことになりそうだ。

一瞬、ベッドで乱れる佳代を
脳裏にまざまざと想像してしまって、

「はぁぁぁぁぁぁ……」
欲望を吐き出すように、深いため息をひとつついて、
ロックグラスを一揺すりする。

カラン、とグラスの中の氷が融けて、
グラスの中で、形を徐々に失っていく。
それは、
俺の、今にも融け崩れそうな理性のようで。

……アイツは俺のこんな懊悩を、
俺の脳内で、行われている淫らな想像を、

……何一つわかってはいねぇな……。
男なんて所詮そんなもんだ……。
と、自らを慰めつつ。

グラスに一つ欲望にまみれたため息を落とす。


「……俺の理性も、そろそろ限界なんだがな……」



── END ──
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