【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
一瞬その姿に見とれそうになって、

「……お前の姉ちゃん。
以前より綺麗になってねえ?」
俺が台所を出ていく佳代の背中を見送りながら、
そんな自分を誤魔化すように隼大に言うと。

「愛・妻・家の旦那様に、
めちゃめちゃ溺愛されているからじゃないっすかねー」
思いっきり棒読みで返してくるし。
一瞬、何と言い返そうか迷って。

「……よし、から揚げ食っとけ」
机の上に残されたから揚げを指さす。

「あざ~すっ」
から揚げが好物な義弟は、即指を伸ばして、
稲荷寿司を片手にそれにかぶりついている。

「てか、拓海。もう時間じゃね?」
隼大に言われて慌てて時計を見ると、
既に出かける時間だ。

「佳代、俺行くぞ?」
そう声を掛けると慌てて玄関まで出てくる。

「PTAリレーに出るんだっけ?
応援してるから頑張って走ってね」
そう言うと、一瞬ダイニングに座る弟の背中を確認して。
俺のシャツの二の腕にギュッとつかまって背伸びして。
いってらっしゃいの、キスをする。

「一位で帰ってこなかったら、夕食抜きだからね!」
唇が離れた途端、こっちを睨みつけるようにする。
……まあ、照れ隠しなわけだが。

「……照れてんじゃねーよ」
耳元で囁くと、かあっと上気したままの顔で。
「照れてなんていないってば!」
言い切る様子に思わずくつくつと笑いながら、
手を振って家を出て行った。
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