【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
そのまま競技会場に入場していくと、
「さて、次はPTAリレーです。
先生と、お父さんお母さん、どっちが早いでしょう?」 楽しげな子供のアナウンスが聞こえる。
列に並んで、
慌てて来たので今更ながら準備運動を兼ねて、
屈伸をしていると、
ふと視線を上げた先に、
腕を片腕で抑え体をひねるようにして
ストレッチしている父兄がいる。
俺と同じように最後尾に並んでいるのは、
スラリとした長身に、黒のVネックのTシャツ。
ジーンズ姿。
何処かで見たことがある男親だ。
向こうはこちらを知っていたらしく、
「今日はよろしくお願いします」
低く渋い声で穏やかに自己紹介すると、
こちらに向かって会釈をする。
顔を知っているはずだ、隣のクラスの男子の父親だ。
柔らかく笑みを浮かべ頷く彼を見ながら、
何の仕事をしているのかわからないが、
なかなか走れそうだな、と判断する。
一瞬お互いの視線が交わる。
「アンカーですか?」
そう尋ねられた瞬間、向こうから、
「拓海さん、頑張れ~!」
大きな声で両手を振る佳代に気づいてしまう。
視線があって、お互いに小さく苦笑する。
「……嫁が怖いんですよ。
ウチ、負けたら夕食抜きらしいんです」
冗談めかして言うと、
「宮坂先生なんかに、負けんなよっ」
児童席から椅子に乗って叫んでいるのは彼の息子だ。
「……『先生なんか』って、何だその言い方は」
後でキッチリ締めてやらないといけねぇなあ……。
しかも、椅子の上に立ち上がるとは……どういう了見だ、と
小さな声で剣呑に呟いている様子は、なかなか厳しそうな父親だ。
「さて、次はPTAリレーです。
先生と、お父さんお母さん、どっちが早いでしょう?」 楽しげな子供のアナウンスが聞こえる。
列に並んで、
慌てて来たので今更ながら準備運動を兼ねて、
屈伸をしていると、
ふと視線を上げた先に、
腕を片腕で抑え体をひねるようにして
ストレッチしている父兄がいる。
俺と同じように最後尾に並んでいるのは、
スラリとした長身に、黒のVネックのTシャツ。
ジーンズ姿。
何処かで見たことがある男親だ。
向こうはこちらを知っていたらしく、
「今日はよろしくお願いします」
低く渋い声で穏やかに自己紹介すると、
こちらに向かって会釈をする。
顔を知っているはずだ、隣のクラスの男子の父親だ。
柔らかく笑みを浮かべ頷く彼を見ながら、
何の仕事をしているのかわからないが、
なかなか走れそうだな、と判断する。
一瞬お互いの視線が交わる。
「アンカーですか?」
そう尋ねられた瞬間、向こうから、
「拓海さん、頑張れ~!」
大きな声で両手を振る佳代に気づいてしまう。
視線があって、お互いに小さく苦笑する。
「……嫁が怖いんですよ。
ウチ、負けたら夕食抜きらしいんです」
冗談めかして言うと、
「宮坂先生なんかに、負けんなよっ」
児童席から椅子に乗って叫んでいるのは彼の息子だ。
「……『先生なんか』って、何だその言い方は」
後でキッチリ締めてやらないといけねぇなあ……。
しかも、椅子の上に立ち上がるとは……どういう了見だ、と
小さな声で剣呑に呟いている様子は、なかなか厳しそうな父親だ。