【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
「……ああもう」

思わず声を上げて、パタンとノートを閉じる。
ちらっと時計を見ると、
10時半を過ぎたばかりで、
ふっと寝室を覗くと、隼大はよく寝ている。

あんまりほめられたことではないけど、
どうにも落ち着かなくて、
私はそっと家の鍵をかけて、外に出かけていく。

と言っても、出かけ先は、
うちから5分ほどのところにある、
『穂のか』だ。

明るい店のライトを見つけて、どこかホッとした気持ちで、
私は暖簾をくぐった。

「ああ、佳代ちゃんじゃない、いらっしゃい」
そう言ってくれるのは、ママだ。
「今貴志くんと、先生が来てるよ」

そう言われて、私は先ほどまで私の気持ちを騒がしていた、
当の本人がそこにいることに、少しだけ動揺する。

「勉強するんじゃなかったのかよ……」
そう声を掛けてくるのは貴志で。

「なんか、船で疲れたみたいで、
全然集中できないからさ……」
そう言って、私は
貴志と先生が離れて座っているカウンターの、
ちょうど間あたりに座る。

「佳代ちゃん、何がいい?」
マスターがそう声を掛けてくれるから、
サワーを一杯もらって、お通しに箸をつけた。
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