【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
慌てて顔をぬぐっていると、
呼び鈴が鳴るから、慌てて私は玄関に出る。
走ってきたのだろう呼吸を少し荒げて、
そこにいたのは宮坂先生だった。

「あの、先生、のところに、隼大行ってないですよね?」
私の言葉に彼が眉をしかめて、首を横に振る。

「隼大の奴、帰ってきてないのか?」
「いえ、帰ってきたんですけど、
そのあと、私と言い争いになって、家を飛び出してしまって……」

そう言うと、彼はニヤリと笑う。
「まあ、そういうことなら心配しないでも、
そのうち帰ってくるだろう?」
その言葉に私は顔を横に振る。

「夕食前からだから、
もう1時間半以上帰ってきてないんです」
そういう私の言葉にも、

「大丈夫だ。そろそろ帰ってくるだろうからな。
って何があったんだ?」
その言葉に、私は私は新しい担任の先生の連絡帳と、
最近の隼大の話をする。
私の話を聞きながら連絡帳を見ていた先生は
微かに眉をひそめた。

「まあ、麻生先生の言いたいことはわかるが、
ちょっと、隼大に対して点数が辛いな……」
ふぅっとため息をついて、

「アイツが、めちゃくちゃいい奴なのは、俺も知ってる。
友達思いだし、口は悪いが、
弱い奴に意地悪をするような事もしねぇしな……。
……まあ、佳代も隼大も、
環境が変わりすぎて、ついていけねぇよな……」
そう言って、慰めるように私の頭をくしゃりとかきまわす。

「佳代だって、まだ20歳超えたばっかりだ。
姉にはなれても、母親にはなれねぇよ……」

そのまま、慰めるように、髪の毛を撫ぜてくれるから、
私は彼に肩に顔をうずめて涙が止まらなくなってしまった。

一瞬彼が困ったような顔をした気がしたけど、
何もかもが不安で、どうしても誰かに頼りたくて、
そこから顔を上げることができなくて……。

そんな私に気づいたのか、
一瞬彼が、諦めたような小さなため息をついて、

「……ま、好きなだけ、泣いとけ……」
そっと私を抱き寄せて、私が泣いている間、
その大きな無骨な指先で、
優しく、優しく私の髪を撫ぜてくれた。
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