【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
私が職員室で5分ぐらい待っている間に、
彼は帰り支度を先にしていたらしく、
あっという間に、玄関に出てくる。

「行くか……」
そう言って先に歩き始めるから、
思わず後を追ってしまう。

校門を出て、彼の横に肩を並べて歩きながら、
ふとさっきの会話が気になって
気づけばつい尋ねてしまっていた。

「宮坂先生、あの……麻生先生って、
いつもあんな感じなんですか?」

「あんな感じってのは?」
夕日に目を細めて、彼が尋ねる。

「なんか、こう……甘えるみたいな?」
「ああ、普段からああいう話し方するな……」
そう言って、

「……気になるか?」
一瞬耳元でからかうように囁く。

「き、気になんてならないですけどねっ」
思わずそう言いかえしてしまうと、
楽しそうに、彼はくつくつと笑う。

「まあ、よくわからんが、
麻生先生はそう言う奴みたいだな」
変な奴だ、そう前をまっすぐ向いたまま再び笑った。

(先生、違うよ……)
さっきに私を睨んだ麻生先生の瞳を思い出す。
麻生先生は、宮坂先生の事が好きなんだ。

そう思うと、さっきの彼女の態度とか、
私に対する視線とか、そう言うのが全部理解できてしまう。
でも宮坂先生は、彼女のことをどう思っているんだろう?

同じ先生同士だし、同僚だし、
年齢といい、お似合いと言えばきっとお似合いなんだろうと思う。
学校の先生同士で結婚するとかって
よく聞く話だし……。

そう思うと何だか妙に気分が落ち込んでしまう自分に気づいて、
私は思わず頭を軽く振って、その考えを追い出そうとする。
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