【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
「でも、彼は多分、その前の彼女なのかなんなのか、
詳しくはわかんないけど、その人の事が忘れられてない」
彼女が言うと、事態はすごく単純に思えてくる。

「じゃあ、佳代がどうしたいかによって、
違ってくると思うんだけど」

「彼が好きで付き合いたいなら、そう言う風に動く。
それとも、それなら諦めるっていうなら、そう言う方法もある」
彼女の言葉に他人事のようにうんうん、とうなづく。

「佳代って恋愛沙汰には、本当に疎いよね……」
呆れたような声で千尋がそう言って、
残っていたコーヒーを一気に飲む。

「どうしたいのか、自分ではまだわからないんでしょ?」
そう尋ねられるから、
しばらく考えてみて、やっぱりどうしたらいいのかわからなくて、

「うん……よく、わからない……」
そう答えると、
よしよし、と小さい子の頭を撫でるように、
私の頭を撫でて千尋が言う。

「それなら、まずは自分が彼のことをどう思っているのか、
それから、彼とどうなりたいのか、
……そこからまず考えないと、答えは出ないかもね?」
次の瞬間、思いついたようにくすり、と彼女が笑う。

「あのさ、じゃあ、その麻生先生ってのと、
その先生が付き合っても別にいいの?」
そう尋ねてくるから、
一瞬麻生先生がベタベタと彼にくっつく様子を思い出して、
瞬間的に眉をひそめてしまう。

「……なんか、嫌だ、それ……」
思わず私がそう言うと、

「多分自覚症状あんまりないけど、
彼を誰かに取られるのが嫌ってことは、
本当は自分のモノにしたいって、
そう言うことなんだと思うよ?」
そう彼女が言って笑う。

「後で誰かに取られて泣くくらいなら、
とりあえず、やれるところまで頑張ってみたら?」

少なくとも今は彼はフリーみたいだしね。
佳代は、もともと美人だし、意外といけてると思うよ?
今だって、彼から見た佳代の立ち位置は悪くない。
そう言うと、彼女はにっこりと笑った。
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