【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
時間が止まって欲しい。
そう思っていても
あっさりと家の前に着いてしまうのだ。
「じゃあ、な」
そう言って彼がその場を立ち去ろうとする。
「あ。あのっ」
思わず声を掛けてしまう。
振り向いた彼に、
「ご馳走様でした。美味しかったです」
そう言って深々と頭を下げると、
彼がふっと笑って、下げた私の頭をふわりと撫ぜる。
ドキンと心臓が鳴って、鼓動が激しく打ってしまう。
絶対顔が赤くなっている、そう思いながら、
慌てて頭を上げると、
正面から彼と視線が合ってしまった。
「……あっ」
ふっと彼が柔らかい瞳で、
「……まあ、また機会があったらな……」
そんな曖昧なことを言うから。
思わず、そんなつもりはなかったのに、
一瞬涙目になってしまう。
そんな私に気づいて、彼が瞠目して、
それから唇の端に小さく笑みを浮かべる。
「そんな目で見るんじゃねぇよ……」
私の髪の毛を一筋捕まえて、
一瞬耳元に唇を寄せて囁く。
「そんな一瞥で男はその気になるんだぞ?」
笑いを含んだ言葉に、ゾクリと全身が上気する。
「そ、そんなつもりは……」
言いかけた私を、低く笑って軽く流して、
そのまま踵を返して、ふと思いついたように足を止める。
一瞬振り向いて、
「ほら、さっさと早く家に入れ」
そう言って、さっき私の頭を撫ぜていた大きな掌を、
後ろ手に、ふわりと高く上げて、ひらひらと振る。
「またな」
そう言って立ち去る彼の背中を、
私は何だか切なくて涙が零れそうな気持ちで見ていた。
そう思っていても
あっさりと家の前に着いてしまうのだ。
「じゃあ、な」
そう言って彼がその場を立ち去ろうとする。
「あ。あのっ」
思わず声を掛けてしまう。
振り向いた彼に、
「ご馳走様でした。美味しかったです」
そう言って深々と頭を下げると、
彼がふっと笑って、下げた私の頭をふわりと撫ぜる。
ドキンと心臓が鳴って、鼓動が激しく打ってしまう。
絶対顔が赤くなっている、そう思いながら、
慌てて頭を上げると、
正面から彼と視線が合ってしまった。
「……あっ」
ふっと彼が柔らかい瞳で、
「……まあ、また機会があったらな……」
そんな曖昧なことを言うから。
思わず、そんなつもりはなかったのに、
一瞬涙目になってしまう。
そんな私に気づいて、彼が瞠目して、
それから唇の端に小さく笑みを浮かべる。
「そんな目で見るんじゃねぇよ……」
私の髪の毛を一筋捕まえて、
一瞬耳元に唇を寄せて囁く。
「そんな一瞥で男はその気になるんだぞ?」
笑いを含んだ言葉に、ゾクリと全身が上気する。
「そ、そんなつもりは……」
言いかけた私を、低く笑って軽く流して、
そのまま踵を返して、ふと思いついたように足を止める。
一瞬振り向いて、
「ほら、さっさと早く家に入れ」
そう言って、さっき私の頭を撫ぜていた大きな掌を、
後ろ手に、ふわりと高く上げて、ひらひらと振る。
「またな」
そう言って立ち去る彼の背中を、
私は何だか切なくて涙が零れそうな気持ちで見ていた。