【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
小学校の先生をやっているくらいだから、
頭が悪いってことは絶対ないと思うけど、
そうか、運動は基本的になんでも得意なんだなと、
今日は彼のちょっと意外な面をいっぱい見るなあ、
とそう思って、なんだか、楽しい気分になる。
それに、お弁当のことだって、
ちゃんと剛君のことをわかってて、
それで多めにお弁当を作ってきて、
一緒に食べるつもりだったんだ。
本当にいい先生だなあって、そんな風にあらためて思う。


「PTA競技、優勝は白組です!
お父さん、お母さん、先生ありがとうございました」
そうアナウンスが流れて、PTA競技が終わり、
私は元の観覧席に戻っていく。
そのあと、最終競技に、高学年によるリレーが行われる。

隼大は6年生のアンカーで、
赤組のアンカーとデットヒートを繰り広げた挙句、
一位でゴールに帰ってくる。

私は久しぶりに、大声を出して、
隼大を応援していた。
お母さんがここにいない分、
余計に声が大きかったかもしれない。

母を思い出して、大声を出しながら、
私はうっすらと涙が浮かぶ。
運動会の時に誰よりも大きな声で応援してくれてた母。

「やるからには勝ちなさい!」
そう言っていつも、豪快に笑ってた。
私は走るのが速かったから、
いつも運動会で褒めてもらえるのが嬉しかった。
隼大も母に褒めてもらえるからずっと、一番で走ってたんだと思う。
今回は、母がいない分、私が思いっきり褒めてやらないとな、
そんな風に思いながら、彼の走りを、
母に負けないくらいの大声で応援していた。

ちゃんと隼大も大きくなっているよ。
私も毎日頑張っているから安心して。

そう大きな声で応援しながら、
天国の母に向かって心で話しかけていた。

そうして、結果、隼大たちのいる白組が優勝して、
隼大は上機嫌で帰ってくる。
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