【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
「…………ぅ……ぅ……」
声が出なくて、息苦しくて、
私は叫ぼうとするけど、その布にさえぎられて、
声すら出ない。

「若いオンナは久しぶりだな」
そう言って、ケタケタと笑う。
次の瞬間、胸をわしづかみにされて、
その痛みに、声にならない悲鳴を上げる。

逃れようと体をよじっても、
上から重たい体重を乗せられていて、
動くこともままならない。

やだよ、やめてよ。
そう、声にならない声で叫んでいると、
じわり、と涙が浮かぶ。

下卑た笑いを浮かべる男の顔が近づいてくる。
それが嫌で顔を横に背ける。

「姉ちゃん、綺麗だな……」
「……オトコは知ってるか?」
そう言ってくるから、とっさに顔を横に振ってしまう。

すると爆笑するような声を上げて、男は笑った。

「そうか、処女か、そりゃ、楽しいな……」
そう言うと、するり、と指先をスカートの裾から差し入れる。

私はより一層暴れようともがくと、
一瞬その手を引き抜いて、

もう一度両方の頬を平手打ちをされた。
頬の中が切れて、血の味を舌先が感じる。
痛みより、熱さを感じて、
でも、想像外の暴力に、抵抗する体の力が恐怖で抜けてしまう。

助けて……。
声にならない声を上げる。
涙がぽろり、ぽろり、と零れ落ちていく。

力の入らなくなった体を、男が無理やり押し開く。
スカートの裾から指を入れて、
荒っぽく太ももを掴む。
もう一度抗おうとするけど、
もう、体に力が入ってくれなくて、

「やだ、やめて!!!」
上げた声は、口に押し込まれたタオルに吸い込まれて、
私は涙を零しながら、目を見開いた。

一瞬彼の顔が思い浮かんで、
それでも、全身に力が入ってくれなくて、
私は男の手を避けることもできなくて、
抑え込まれた指先だけぎゅっと握りしめていた。
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