【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
「まあ、いつかは、誰かにやられちまうんだよ」
そう厭らしく言うと、男は自らの緩んだジャージを、
下着ごと一気にずり下ろす。

興奮状態で、露出するそれを見て、
本気でマズイと思って、妙に冷静になる。

男性のそんな状態を、
こんな状況で見るのは初めてだけど、
仕事でまあ、割と見慣れてはいたせいで、
逆に頭が妙に冷静になってしまった。

頭をめぐるのは半端な看護知識で、
それがこの場では全く役に立つわけでもなく、
それでも何とか身じろぎをして、
この状況から逃れようと力を入れようとすると、
それをあざ笑うように、私の下着に手を掛ける。

足をばたつかせて、それを阻止しようとすると、
男がとっさに手を挙げた。
叩かれる、と思って、
それでもそれに屈服することが悔しくて、
涙に濡れた瞳で、相手を睨みつけた瞬間。

扉がドンドンと叩かれる音がする。

「うるせぇなあ……」
その音の大きさに、男が眉をひそめる。
「倫太郎!!」

そう外から聞こえる声は、聞き覚えのある声のような気がして、
私はとっさに身をよじる。
何度かその名前を呼んで、戸を開けろという言葉を聞いて、
やっぱり、それは彼の声だと気づいて、

私はようやく完全に力が戻った気がして、
慌てて抵抗をするために体を今まで以上に激しく、左右に動かして、
男の抑え込む手から逃れようとする。
男はとっさに私を叩こうとして、もう一度手を挙げる。

「倫太郎、入るぞ!!」
ガチャリとドアノブをまわす音がして、
次の瞬間そう声が聞こえた。
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