【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
『この数日、倫太郎君の様子がおかしいんです』

彼女の話によると、
最近母親が、彼を置いたまま、家を出て行ったように見受けられること、
それが一時的な家出とか何か理由があるのかわからないけど。
そうすると、家にいるのは、あまりタチが良いとは思えない、
酒に昼間から泥酔する、評判の悪い父親のみではないかということ。
最初は、隼大君も一緒に謝りに行くと言っていたけど、
もしかして、あの問題の多そうな父親に、
若いお嬢さんが謝罪にお邪魔するとなると、
難癖をつけられたりするんじゃないかと……。

そんな風に言う麻生先生の言葉を聞いて、
謝罪に俺も一緒に付き合うからと、
そう言おうと思って家に電話すると、
家にいるのは隼大だけで、

俺が熱を出したから、姉ちゃんが一人で謝りに行った、
とそう言うから、
何だか妙に胸騒ぎがして、そのまま倫太郎の家に向かったんだ。

そう彼は言うと、
そっと私の頭を撫ぜて、顔を覗き込む。

「しかし、よく男に襲われる奴だ……」
そうやって、困ったような笑みを浮かべる。
私は何だか、顔が赤くなってきてしまう。
前の時も助けてくれたのは、宮坂先生で、
「……気をつけろよ、
こっちの心臓がいくつあってもたりねぇよ」

そう言って
「まあ、お前が悪いわけじゃないのは
よくわかっているんだがな」
冗談めかして笑う。
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