【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
私といえば、先日のショックが抜けきらなくて、
小さな物音でもびくびくとしてしまう。
それでも、先生が私を助けてくれたことが、
すごく心の支えになっているみたいで、
思ったよりはひどい精神状態にならずに済んでいる。

先生はかなり心配をしてくれていて、
たまに私の様子をうかがいに来てくれる。
そんな時も、心配して様子を見に来ている、
という様子は一切見せなくて、
くだらないことを言っては、私をからかったりする。

本当なら男の人が完全に怖くなってしまいそうな
出来事だったのに、
そのつかず離れずの距離感が、
今の私にとっては心地よい。
何より、心配しているからだろうけど、
気にかけてくれる気持ちが一番嬉しい。

3学期の最後の個人懇談では、
麻生先生が私に深々と頭を下げた。

「私がちゃんと前もってお話をすれば……」
そう言って涙目で私を見て、
申し訳なさそうに眉を下げている。

「いえ、でも、麻生先生が宮坂先生に、
お話してくださらなかったら、
もっと大変なことになってたと思うので……」
そう私が言うと、
少しだけほっとしたような顔をした。

宮坂先生に対する態度は、
どうしても互いにいい気持ちはしないけれど、
それはきっと私も彼女も同じような感覚を、
彼に対して持っているからで、
基本的には、嫌な人ではないのだろうと思う。
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