【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
とくん。とくん。となる甘い鼓動に、
一瞬息が詰まりそうになる。
彼が、普段よりずっと優しい瞳の色を
しているように思えて、
その甘やかな雰囲気が恥ずかしくてたまらなくて、

「あ……」
彼の肩先に桜の花びらが落ちているのに気づいて、

「もう、先生だって……」
そう言って指先を伸ばそうとした瞬間、
目の前の小さな段差に気づかなくて、
かくんっと、姿勢を崩しそうになる。

次の瞬間、ふわりと、柔らかく、
彼に抱き留められていて、

私は先ほど花びらを取ろうとしていた、
その肩に顔をうずめるようにしていた。

「……たく、危なっかしい奴だな……」
そう言って、
次の瞬間、ふっと彼が笑って、
肩に顔をうずめる私の耳元に唇を寄せる。

「……先生って、今、言ったよな?」
そう言うと、悪戯っぽくニヤリと笑う。

はっと顔を上げる私の頬を
指先で撫ぜる。

「は……あの……」
思わず言葉が出なくて、

「……そんなに呼びたくないか?」
そう言う彼の瞳が一瞬、
切なげな色を見せたような気がして、
私は思わず、顔を上気させて、

「……た……くみ?」
そう緩やかに視線を上げて、
彼を見上げて、彼の名を呼ぶ。
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