マイノリティーな彼との恋愛法
「いいなぁー。柏木さんイケメンだし御曹司だし、キスうまそうな唇してたし、声もセクシーだったし、欠点見当たらなかったもんなぁー」
「そっちは?秀行さんとはどうなのよ?」
「クリスマスイブに会う約束はしてますけど…………って、話題変えないでくださいよっ」
暴走していた風花ちゃんも、さすがに秀行さんの話題でストップした。
彼女はモジモジと自分の指を絡ませながら、「実は〜」と私を上目遣いで見つめてきた。
そして次の瞬間、バッグの中から毛糸の塊を取り出した!
「これっ、見てください!クリスマスプレゼントは手編みのマフラーにしようと思ってるんです!」
「うわっ!びっくりしたー」
定食屋で作りかけのマフラーを取り出されるとは思っていなかったので、ベージュのこちゃこちゃした毛糸をまじまじと眺めた。
…………なんか、マフラーとは程遠い見た目なのは気のせい?
「て、手編みかー。まだ序盤……なのかな?」
「もう8割出来てます」
「こっ……これで!?」
「秀行さんからのリクエストなんです、手編みのマフラー!」
8割出来ているとは思えないのだけれど、編んでいる本人が言い張るのだからそうなのだろう。
……それにしたって、リクエストとは!
あれだ、「付き合おう」って確認し合ってないだけで、もう付き合っちゃってるやつなんじゃないか?
「これプレゼントして、告白して、あわよくば告白されて、その日は彼の家に泊まるのが目標ですっ。大好きなモデルが下着メーカーとコラボしたやつがあるんですけど、それも勝負用に買ってあります」
「下着ねぇ……」
エビフライの最後の尻尾をボリボリ噛み砕いて他人事のように聞いていたら、風花ちゃんが目を釣り上げて私に人差し指を突きつけてきた。
「ちょっと!春野さん、他人事じゃないですからね!」
「えっ、なんで?」
「突然ホテルに誘われたら行けますか?上下セットの下着つけてますか?その下着はヨレてませんか?ブラからワイヤーが飛び出してませんか?レースに穴は空いてませんか?」
「…………そ、それは……」
ヤバい。上下揃ってない。
ヨレてる、ワイヤーも飛び出しかけてる、かろうじてレースには穴は空いてない。
でもとてもじゃないけど人様には見せられない。
無意識に両腕で胸のあたりをまさぐってしまった。