マイノリティーな彼との恋愛法


「そういうところ、女子力低っ。男はブラとショーツがセットじゃないと萎えるらしいですよ。古い下着なんて言語道断」


先輩に対する物言いとは思えない口調でバッサリ切り捨てた彼女は、あからさまにため息をついて肩を落とした。


「あぁ、どうして柏木さんは春野さんがいいんだろう」

「それは私が一番聞きたい」

「顔は……まぁ美人系なのは認めますけど、スタイルはどっちかっていうと貧相ですよね。それに比べて私はグラマラスだしスレンダーだし……」

「そろそろキレるぞ」

「あはっ、コワーイ」


もう、ほとんど友達みたいな会話。
今ガッツリがぶり四つで仕事をしているからか、完全に懐かれてしまった。

残念ながら、私も若干心地よくなりつつある彼女とのカンケイ。




定食屋をあとにして、会社へ戻る道すがら念を押すように風花ちゃんに尋ねられた。


「春野さんって〜、本当に本当に、神宮寺さんとは何も無いんですよね?」

「もー!だから何度も言ってるでしょ?最初から何も無いんだって」

「それならいいんですけど。だって測量士と建築士って仕事上関わりがあるじゃないですか。柏木さんだって神宮寺さんと恋愛絡みで険悪になりたくないですもんね。何も無かったなら問題ないかー」


軽快な足取りで歩く風花ちゃんとは真逆に、私はちょっとだけ体が重く感じた。
それは定食のご飯を大盛りにしてしまったからとか、そういう理由からではない。

神宮寺くんとは、否定するのもおかしいほど何も無かったからだ。

ただひたすらに食べて飲んで、そして解散。恋愛要素が入り込む隙なんて、1ミリも見つけられなかった。


それなのに、どうして私は彼が気になったのか不思議である。

今思えば、容姿だってタイプじゃないし、ヤツは恋愛が面倒くさいと無表情で口にするし、結婚願望はゼロだと言っていた。

ただ、時々見せる人懐っこい笑顔がわりと素敵で、そして会話や行動の端っこにほんの少し見え隠れする彼のスキンシップがなかなか魅力に感じてしまったのは事実だ。


普段冷たい人が優しくしてくるとグラリと来る、いわゆるツンデレの究極最終形態のような男なんじゃなかろうか。
まあ、デレてるところは一度も見たことないけれど。


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